暮らしを磨くとき

理想は丁寧な暮らしをする上品レディ。愛するくらしを実現するための生活記録。

魔法のレモンサワー~私から私へ~

BUMP OF CHICKENに「魔法の料理~君から君へ~」という曲がある。歌い出しの言葉が好きで、リリース当時は胸を打たれた。「叱られた後にある晩御飯の不思議」。当時17歳のどくちゃん少女。藤くんは、日常を切り取るのが本当に上手いなぁと、彼に心酔していた私は、それでなくとも感動しきりだった。リリースから13年が経った今も、BUMPの好きな曲ランキングの中で、かなり上位に入っている曲だ。(1番好きなのは日によって変わるんだけど、今は『embrace』が好き。)

さて、純粋な10代をとうに過ぎ、自分で人生の舵をきらなければいけない29歳。今の私にとって1番不思議なのは、「叱られた後にある晩御飯」ではなく「仕事の後に来る酒を飲みたい」という衝動である。

私はこのブログのプロフィールにも記載している通り、酒が好きだ。ただ、普段酒は買い置きをしていない。私はレモンサワーばかり飲んでいるのだが、できるなら缶チューハイよりも、居酒屋などで飲めるキンキンに冷えた生レモンサワーを味わいたい。最近は「氷結 無糖レモン」のおかげで家でレモンサワーを飲むのもやぶさかではなくなったが、缶のレモンサワーは特有の人工的な甘さがいやで、あまり飲む気にならない。舌に残る甘さがべったりとして気持ちが悪く、変な酔い方をしてしまう。家で飲む酒もそれはそれで好きだが、せっかく酔うならおいしい酒で酔いたいものだ。

なのに、ある日突然「缶でいいからとにかく今日、このあとなるはやでレモンサワーが飲みたい」という想いにとらわれてしまう。大体は終業の10分前くらいに突然思いつき、頭から離れず、仕事終わりにすっぴん・ジャージ・ぼさぼさの髪につっかけサンダルで、コンビニへと走るのだ。上品な女性を目指すみとしては、非常に遺憾なことだ。せめてズボンをはき替えなさい。

ただ、この「仕事終わりに来る酒を飲みたい」という衝動には、ある程度予測がつく部分もある。発動条件があるのだ。たとえば、季節はずれに暑い春の日。一日曇っていたのに、夕方になって日が差し、見事な西日が街を染める梅雨の日。ゲリラ豪雨の後、真っ黒の地面から湿った匂いが立ち込める、夏の午後など。ほかにもただ「仕事を頑張って片づけた日」などもあるが、私の中の飲兵衛は、どうやら外の空気の匂いに敏感らしい。ただ、この法則をわかっているからと言って、我慢ができるわけではない。今のところ、この状態になって酒を我慢できたことは、ただの一度もない。

つい先日も、まさにこの状況になった。台風が近づいているとニュースは言っていて、スマホで見た天気予報が雨だったので、「今日は調子悪いだろうなあ」と思いながらダラダラ仕事をしていたのだが、外はまずまずの晴れで、風が気持ちよかった。夕方、終業間近の17時過ぎに理由もなくベランダに出ると、空の高いところが少しくすんだ水色で、低くなるにつれてたまごのように柔らかな黄色、色づき始めたオレンジのような淡い橙色のグラデーションが美しい。薄く広がった雲の上に、もくもくとしたはぐれた雲が浮かんでいて、少し陰になっていた。西の空には、眩しい西日が光のラインを町中に引いており、淡いが見事な夕焼けだった。ベランダでただぼーっと夕焼けを眺めていた私は、「これはまずいぞ」と思った。だってこんないい陽気の中で酒を飲んだら最高過ぎる。絶対レモンサワー飲みたい。レモンサワーしか勝たん。

そういうわけで私は、少し残っていた仕事を明日の自分に託し、早々に仕事を切り上げ、先述の通りの出で立ちで酒を買いに走ってしまったのである。そしてあろうことか、たった3分で帰れる距離のコンビニに行ったにもかかわらず、家まで待ちきれずに歩きながら飲み始めてしまった。「上品で洗練された大人の女性は、外で缶チューハイなど飲み歩きません」とお叱りの声が方々から聞こえそうだが、こうなってしまっては仕方がないのだ。これはもう魔法なのだ。こんな大人になってしまって、目の前が滲む思いだが、きっとあの、憧れの藤くんにだってこんな日はあるだろう。(あれ、彼は酒飲まないんだっけ……。)

私はそれでも上品な女性になることをあきらめない。魔法の力にはあらがえないので、別の角度から、憧れを目指して進もうと思う。

 

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